生きやすさマガジン

自分が生きやすく、みんなも生きやすく

『違国日記』②第2話

遺品を整理した翌日、朝の卒業式の日。終わる中学の生活から高校への想いをつのらせて登校した朝の元に親友のえみりが思いつめた様子で声をかけてくる。そこで朝はえみりの母が連絡網を回し、朝の両親が亡くなったことが学校中に知れ渡っていることを知る。
先生たちにもあれこれ言及され、朝はついに自分じゃいられなくなることに逆上する。

 

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「えみり最悪」「大ッ嫌い」
友に暴言を残し学校を去る朝。自分の気持ち、感じ方は自分だけのもので誰にも責める権利はないという槙生の言葉が頭をよぎる。泣きながら無心で足を運んだ先は遺品を整理したかつての実家だった。そこまできてようやく自分が帰る場所ではなかったと気づく。
「…どうやって帰るんだっけ…」と自分の戻る所があやふやになる朝。

 


帰りの遅い朝を心配をしている槙生の元に、ようやく機嫌悪く帰ってくる朝。苛立つ朝に槙生は言う。


「朝。わるいけどこの家に一人になれる場所はない」
「わたしはあなたに何かあったんじゃないかと思ってぞっとしたしあなたとわたしの間の感情には関係なくあなたを気づかう責任がある」

他人の気持ちは責めない。でも他人に対しての責任を持つ。他人に対して冷たいように聞こえる槙生の言葉も、見捨てる・無関心の意味ではなくきちんと見守る覚悟がある上での発言だった。


「どうした」と聞く槙生に朝は答える。

 

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『違国日記』②第1話

朝の実家にやってきた二人。こもった空気をいれかえながら遺品の整理をする。
記憶の中の姉とは違う姉がそこにはあった。

 

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“来るはずだった来週、水をもらえるはずだった植木たち、クリーニングに出すはずだったストライプのシャツ”
“世界から忽然と存在が消える”


それらの中で朝はまだ母のことを現在形で話す。朝にとってはまだ続いている。「それを強引に断ち切る必要はない」と言う槙生。
だが槙生にとっての姉は過去の存在。
「過去完了形」の存在だ。


遺ったものをゴミとして出すたびに「さよなら」を告げる。

 

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『違国日記』第5話

一巻最後のお話はこの物語にはほとんど出てこない“男”が登場する。
珍しく化粧をして出かけた槙生の相手は、元恋人である笠町だった。彼との会話は別れてからの年月で鋭さも消え、お互いの胸の内を大っぴらにできるような関係になっていた。

 

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その彼に今の朝との生活の恐怖を語る槙生。


「15歳みたいにな柔らかい年頃、きっとわたしのうかつな一言で人生が変えられてしまう」


それは朝をなにより大切に思っている言葉であると同時に、姉からそういった一言で傷つけられてきた槙生自身への言葉であった。そんな槙生に笠町も言う。「おれの人生もきみの一言で変わったぜ」と。
そうした笠町との会話から、槙生は自分の踏み出すべき次の一歩を知る。

 


家に帰った槙生は朝に告げる。「あなたの家の整理に行こう」と。

朝の家は、槙生の「姉」が「朝の母」として疎遠になってからもずっと生きていた場所でもある。
 

『違国日記』第4話

二人きりの生活に、槙生の友人が訪ねてくる。ちゃんとした「大人」をしている槙生に驚く友人。
普段の槙生の作る一週間の献立は「親子丼/親子丼/しょうが焼き/しょうが焼き/刺身/鍋/鍋」(昼はうどん)。専業主婦だった母の日常に慣れた朝にとってそれで「ちゃんとやっている」と槙生を評する友人の言葉に違和感があるが、それでまた槙生は傷つく。
しかしそうやって「自分はこんなこともできない」と傷ついてきた槙生を知っている友人の計らいで、槙生も「頼るべきところは頼る。朝にも」と言う。
そうやって徐々に変わっていく、変わろうとする槙生に友人は「尊敬するよ」とつぶやく。

 


そうして始まったみんなでの餃子作り。
毎日母が何を作ってくれたのか、美味しかった料理を思い出せない朝。記憶にうっすらとした霞がかかる。

 


過去の生活から槙生との生活が現実味を帯びてくる。

距離も縮まってきた中でそれでも自分は落ち込みやすいので「圧は弱めで」と言う槙生だったが、朝もそういった「圧」を母からかけられてきたと言う。

 

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同一人物、槙生にとっての姉、朝にとっての母親に「圧」をかけられて生きてきた。
槙生にとっては「普通」に生きてきた朝は時おり圧をかけてくる加害者であるが、その朝も被害者であるとわかる。


砂漠に一人だと思っていた槙生に、同じ気持ちを持った朝が現れる。

『違国日記』第3話

この回から槙生と朝の同居生活が始まる。いわゆる普通の、日常の話になる。


親が死んで葬式が終わり、学校も休みですることがない朝。槙生はずっと隣の部屋で仕事(小説の執筆)。自ら掃除を買って出る朝。人見知りもせず家事も好きな朝という真逆の生き物は槙生にとって不思議な珍獣に映る。
槙生は「大人なのに」そういった普通のことができない。さらに朝が不満を漏らすと正直に「傷つくからやめて」と言う。親や親戚、友達の親といった今まで出会ってきたとは違う「大人」であり、違う人間なのだということが朝にもわかってくる。


そんな違う人間同士でも伝わる感情はある。

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日記を書こうとしてもずっと手が止まり自分の心の砂漠にポツンと一人たたずむ朝。
そんな彼女に槙生は言う。
「日記は今書きたいことを書けばいい。書きたくないことは書かなくていい」
「ほんとうのことを書く必要もない」
「書いていて苦しいことをわざわざ書くことはない」
「“ぽつーん”はきっと“孤独”だね」


孤独の砂漠の真ん中でも、そこでテントを立て暮らしている人間がいる。それを朝は知る。